飲食店の回転率とは?計算方法と顧客満足度を下げない7つの改善策

「ランチタイムは満席で行列もできるのに、なぜか売上が伸びない...」
「お客様の滞在時間が長く、待っているお客様を逃している(機会損失)気がする」
このような悩みを抱える飲食店オーナー様・店長様は多いのではないでしょうか。その原因は、売上に直結する「飲食店の回転率」の管理にあるかもしれません。
結論として、飲食店の回転率は「現状の正確な分析」と「顧客満足度を下げない施策」によって改善が可能です。一方で、効率化だけを急ぐと「急かされている」とお客様が感じ、かえって客足が遠のくリスクもあります。
本記事では、飲食店の経営者が押さえておくべき以下の点を解説します。
- 自店の回転率の計算方法と業態別の平均目安
- 顧客満足度を下げずに回転率を上げる7つの具体策
- 参考になる成功事例と、避けるべき失敗(NG)事例
まずは自店の現状を把握し、売上を最大化する一歩につなげていきましょう。
飲食店の「回転率」とは?計算方法と業態別の平均目安

飲食店の売上を伸ばすうえで、回転率は重要な経営指標のひとつです。席が埋まっている時間が長く見えても、回転率が低ければ売上は頭打ちになりやすくなります。
このセクションでは、回転率の基本と売上との関係、計算方法、そして自店の数値を客観視するための業態別目安を整理します。
そもそも「回転率」とは?売上に直結する理由
回転率とは「一定時間(通常は1日)に、お店の客席が何回入れ替わったか」を示す数値です。回転率が上がれば、同じ席数でも提供できる客数が増え、売上に直結します。
飲食店の売上は、売上=席数×満席率×客単価×回転率で捉えられます。席数の増設や大幅な客単価アップが難しい場面でも、回転率の改善によって売上を伸ばせる余地が生まれます。
例えばランチタイムに1回転の店と1.5回転の店では、同条件でも売上差が出る可能性があります。回転率は「席」という資産の利用効率を表す指標として、優先的に管理したい項目です。
【簡単】飲食店の回転率の計算方法
回転率の計算式はシンプルです。
回転率=1日の総客数÷総席数
具体例で確認します。
- 総席数が50席の飲食店
- 1日の総来店客数が150人
- 計算式:150人÷50席=3
この場合、1日の回転率は3回転です。改善に着手する前に、まずは「曜日別」「時間帯別(ランチ/ディナー)」まで分けて算出し、どこにボトルネックがあるかを把握すると施策がぶれにくくなります。
飲食店の回転率の平均・目安一覧
自店の回転率を算出したら、その数値が高いのか低いのかを判断します。回転率は業態によって目安が大きく異なります。
滞在時間が短い業態と、滞在時間が長い業態では、目指すべき回転率が違うためです。以下はあくまで目安として、客層や立地も踏まえて見てください。
高回転率業態(滞在時間:短)
ラーメン、立ち食いそば、牛丼:5回転~10回転以上(特にランチ)
中回転率業態(滞在時間:中)
定食屋、ファミリーレストラン:2回転~4回転程度
低回転率業態(滞在時間:長)
カフェ、居酒屋、バー、高級レストラン:1回転~2回転程度
同業態の目安と比べて極端に低い場合は、改善余地が大きいサインです。逆に、業態特性上「回転率を上げすぎないほうが価値になる」ケースもあるため、次章の考え方とあわせて整理します。
飲食店は「回転率」と「客単価」どちらを優先すべきか?

回転率は重要ですが、すべての飲食店が回転率だけを追いかけるのは危険です。業態によって「売上の作り方」が異なり、合わない改善はブランド価値を損ねることがあります。
ここでは、回転率と客単価のどちらを優先して戦略を立てるべきかを3タイプで整理します。
タイプA:回転率を優先すべき業態(ファストフード、ランチ専門店など)
客単価が一定で、これ以上上げにくい業態は「客数」が売上の主軸になります。この場合、回転率の改善が売上アップに直結しやすくなります。
該当例:ラーメン、牛丼、立ち食いそば、ランチ専門の定食屋など。
注文から提供、会計までを詰まらせない設計が重要です。ピークタイムは席回転を妨げる要因(待ち時間、レジ待ち、提供遅延)を潰し込むことが成果につながります。
タイプB:客単価を優先すべき業態(高級店、バー、滞在型カフェなど)
「ゆったり過ごす時間」や「特別な体験」を価値として提供する業態は、回転率を上げすぎると魅力が損なわれます。結果として顧客満足度が落ち、リピートが減るリスクがあります。
該当例:高級フレンチ、寿司、料亭、オーセンティックバー、コンセプトカフェなど。
このタイプでは、追加注文(アップセル)やリピートの積み上げで客単価とLTVを高めるほうが筋が良いケースが多いです。回転率は「下がりすぎていないか」を管理する位置づけで十分なこともあります。
タイプC:「回転率」と「客単価」の両立を目指す業態(居酒屋など)
滞在時間と客単価がある程度比例する業態は、時間帯での使い分けがポイントになります。ピークタイムは回転率を意識し、アイドルタイムは滞在時間を許容して客単価を伸ばすといった設計が現実的です。
該当例:居酒屋、ファミリーレストラン、ディナー主体のレストランなど。
ピーク時は提供スピードと会計の詰まり解消、アイドルタイムは限定メニューやテイクアウト・デリバリーでの売上設計など、複線で考えるとブレずに改善できます。
飲食店の回転率を上げる7つの具体策

回転率を上げたい一方で、「お客様を急かすような対応はしたくない」という悩みはよくあります。回転率改善の鍵は、お客様にストレスを与えない効率化です。
ここでは、顧客満足度を下げずに回転率を改善する7つの施策を、IT活用・オペレーション・接客などの観点から整理します。
1.ITツール活用(テーブルオーダー・キャッシュレス決済・予約管理)
ITツールは、回転率改善において即効性が出やすい施策です。スタッフの作業負担を減らし、お客様の待ち時間を短縮できます。特に効果が出やすいのは、注文・会計・予約におけるボトルネックの解消です。
- テーブルオーダー(QRなど)
注文取得の手間を減らし、呼び出しストレスを軽減できます。 - キャッシュレス決済
現金会計のやり取りを減らし、混雑時のレジ詰まりを緩和します。 - 予約管理システム
予約ミスや台帳管理の負担を減らし、席の埋めこぼしを防ぎます。
導入時は、全ツールを一度に入れるのではなく、詰まっている工程から優先的に改善する方が失敗しにくくなります。
2.オペレーションの徹底的な見直し(注文・配膳・片付けの高速化)
ツール導入と並行して、店内オペレーションの見直しは不可欠です。ムダな動きが減るほど、注文から片付けまでの全工程が短縮されます。ポイントは「誰がやっても同じ動きになる」状態を作ることです。
- 注文
着席直後の案内導線(お冷、メニュー、注文のタイミング)を固定します。 - 配膳
厨房から客席までの動線上の障害物をなくし、配膳回数を減らす運用を統一します。 - 片付け(バッシング)
退店後すぐ次の案内ができるよう、優先順位と役割分担を明確にします。
3.「迷う時間」をなくすメニューブックの作り方
注文までの時間が長いほど滞在時間が延び、回転率に影響します。特にメニュー数が多いほど迷い時間は増えがちです。重要なのは、削りすぎず「選びやすい入口」を作ることです。
- メニュー数を絞る(特にランチ)
- セット化する(松竹梅の3択など)
- 「すぐ出る」メニューを目立たせる
写真配置や文字量も含め、決断までの負担を減らすことで顧客満足度の向上にもつながります。
4.スマートな接客術(満席時対応・退店促進)
回転率改善では、接客の伝え方が結果を左右します。内容が同じでも、言い方次第で印象は大きく変わります。
- 満席時の対応例
「申し訳ありません、ただいま満席でして、お目安〇〇分ほどです」 - 食後の声かけ例
「お済みのお皿をお下げしますね。食後のお飲み物はいかがですか」
追加注文の余地を残しつつ、自然な区切りを作ることがポイントです。
5.「お一人様席」の導入など客席稼働率を上げるレイアウト術
満席に見えても、席構成が合っていなければ機会損失が生まれます。客層に合わせた設計が重要です。
- お一人様が多い場合
カウンター席や壁向き1名席の増設 - グループ客が多い場合
2名席を基本に、連結で4名・6名対応できる設計
大がかりな工事をせず、配置変更だけで改善できるケースもあります。
6.「時間制」導入のメリットと、お客様に納得してもらう伝え方
混雑が予測できる時間帯では、時間制の導入が有効な場合があります。
- 入店時(予約時)に必ず「お席は〇〇分制」と案内する
- 「混雑時のみ」など導入理由を明確にする
- 終了前に一度だけ丁寧に声かけする
まずは週末ピークのみなど、限定導入から始めるとリスクを抑えられます。
7.アイドルタイムの限定メニューで売上を底上げする
ピークタイムの回転率改善と同時に、アイドルタイムの活用も重要です。
- ハッピーアワー(ドリンク・一品の割引)
- カフェセット(デザート+ドリンク)
- テイクアウトやデリバリーの強化
特にデリバリーは、客席に依存せず売上を作れるため、アイドルタイム対策として相性の良い選択肢です。
飲食店の回転率改善の成功事例(ケーススタディ別)

ここからは、回転率改善に成功した事例をケース別に紹介します。現場で何が詰まっていて、どの打ち手が効いたのかを見ることで、自店に落とし込みやすくなります。業態別に3つのケースを取り上げます。
事例1:【定食屋】レイアウト変更とオーダーシステム導入で、ランチ回転率が1.8回 → 2.3回に改善
- 課題
オフィス街の50席の定食屋。お一人様が4名席を占有することが多く、客席の使い方が非効率でした。さらに手書き注文によるオーダーミスや、レジ混雑も発生していました。 - 施策
4名席を減らしてカウンター席と2名席を増設。あわせてQRコードによるテーブルオーダーを導入し、注文取得と会計周りの負荷を軽減しました。 - 結果
お一人様・2名様の案内がスムーズになり、客席稼働率が改善。スタッフは配膳と片付けに集中できるようになり、ランチ回転率は1.8回から2.3回へ向上しました。
事例2:【カフェ】「90分制」と「テイクアウト案内」で、顧客満足度を維持したまま週末の売上UP
- 課題
駅前のカフェで長時間滞在のお客様が多く、待ち客を取りこぼしている状態でした。一方で、退店促進を強めると店のイメージ低下につながる懸念がありました。 - 施策
週末の13時~17時のみ90分制を導入し、入店時に丁寧に案内。時間が近づいたお客様には「テイクアウト用のカップでお持ち帰りも可能です」と、気遣いとして提案しました。 - 結果
ルールが明確になったことで納得感が生まれ、テイクアウトの提案も自然に受け入れられるように。顧客満足度を大きく損ねることなく、週末の売上は約15%向上しました。
事例3:【居酒屋】メニューブック改善と「すぐ出るおつまみ」強化で、回転率と客単価が同時に向上
- 課題
最初の一杯と一品目の提供に時間がかかり、満足度が下がりがちでした。また、追加注文のきっかけを作りづらく、客単価の伸び悩みも課題でした。 - 施策
メニューブックの1ページ目に「すぐ出るおつまみ」を写真付きで大きく掲載。ファーストドリンクの声かけ時に、必ずスピードメニューを提案する運用ルールを設定しました。 - 結果
注文時の迷い時間が減り、最初の満足度が向上。追加の一品が入りやすくなり、客単価もアップ。滞在時間の適正化と売上向上の両立につながりました。
飲食店の回転率改善でやりがちな「失敗事例」とNG集

回転率を上げようとする施策は重要ですが、やり方を間違えると顧客満足度が下がり、リピーターを失うリスクがあります。短期の回転より、長期の信頼を優先すべき場面もあります。
ここでは、典型的なNG例を3つ紹介します。
NG例1:BGMや空調で「居心地」を悪くし、リピーターが激減
- やってしまいがちな施策
滞在時間を短くする目的で、BGMを不快なほど大きくする、テンポの速すぎる曲を流す、空調を極端に効かせるといった手法を取ってしまうケースです。 - なぜNGなのか
飲食店は料理だけでなく「空間」や「過ごす時間」も価値の一部です。居心地の悪さは店全体の印象を損ね、「落ち着かない店」という記憶として残り、再来店を遠ざけます。
NG例2:スピード優先で「料理の質」を落とし、クレームと悪評が増加
- やってしまいがちな施策
提供スピードを意識しすぎて作り置きを増やし、冷めた料理を出してしまう、盛り付けが雑になるといった対応をしてしまうケースです。 - なぜNGなのか
回転率と品質を二者択一で考えてしまうと、飲食店の本質的な価値が損なわれます。品質を維持したままスピードを上げるには、仕込み設計や動線、手順の標準化といったオペレーション改善が不可欠です。
NG例3:「早く帰ってほしい」オーラを出してしまい、顧客満足度が低下
- やってしまいがちな施策
食後すぐに無言で皿を下げる、会話中に何度もテーブルを覗き込む、伝票をわざとらしく置くなど、退店を急かすような態度を取ってしまうケースです。 - なぜNGなのか
「歓迎されていない」と感じた体験は強く記憶に残り、再来店の大きな障壁になります。退店促進は、スマートな声かけと納得感のある運用ルールが前提です。
失敗しないための鉄則:「効率化」と「おもてなし」のバランス
失敗例に共通するのは、「効率化」が「不快体験」になっていることです。施策が「お客様のストレスを減らすものか」を基準に見直す必要があります。
例えばテーブルオーダーは呼び出しストレスを、キャッシュレス決済は会計待ちストレスを減らします。お客様目線での改善を積み上げることで、回転率と顧客満足度は両立しやすくなります。
飲食店の回転率改善の「次の一手」につながる関連知識
回転率の改善は売上に効きますが、利益を最大化するには他の要素とも連動させる必要があります。回転率だけに偏ると、利益が残らない、集客が続かない、といった課題が出やすくなります。
ここでは、回転率改善の次に取り組みやすい関連知識を3つに絞って整理します。
- 飲食店の「FLコスト」とは?計算と削減の具体策
FLコストは、食材費(F)と人件費(L)を合わせた指標です。売上が伸びてもFLが高い状態では、利益は残りにくくなります。
回転率改善でオペレーションが整うと、人件費のムダが見えやすくなります。回転率で売上を伸ばし、FLで利益を守る。この2つをセットで管理するのが現実的です。 - 飲食店の「集客」を成功させるアイデア(MEO・SNS活用)
回転率は席の利用効率を示す指標ですが、そもそもの来店客数が少なければ売上は伸びません。式で言えば「総客数」を増やす視点も欠かせません。
MEOやSNSは、少ないコストで継続的に集客を支えやすい手段です。店の強みが伝わる導線づくりと、来店・再来店につながる情報設計がポイントになります。 - 飲食店の「リピーター」を増やす考え方(CRM)
回転率改善は、運用次第で「冷たい店」という印象につながるリスクがあります。だからこそ、効率化とあわせて関係づくりの視点が重要になります。
ポイントカードやLINE運用、来店後フォローなど、店舗規模に合った手段で十分です。新規獲得に偏りすぎず、再来店の仕組みを整えることで売上の安定につながります。
まとめ:飲食店の回転率改善は「現状分析」と「できる施策」から
本記事では、飲食店の回転率の計算方法、業態別目安、顧客満足度を下げずに回転率を改善する7つの施策、成功事例と失敗事例までを整理しました。重要ポイントをおさらいします。
- まず自店の回転率を算出し、曜日別/時間帯別まで分けて現状を把握する
- 回転率と客単価のどちらを優先すべきか、業態タイプで判断する
- 施策は「顧客満足度を下げない」ことを前提に選ぶ
- 居心地を悪くする、品質を落とす、圧をかけるなどのNGは避ける
回転率改善は強力な打ち手ですが、最も重要なのは自店の現状(客層、オペレーション、詰まりポイント)を客観的に分析することです。そのうえで、7つの施策からリスクが低く、すぐ実行できるものから着手していくのが現実的です。
「回転率」の改善をしたい方へ
回転率を上げたいと考えたとき、「もっと席を回す」「オペレーションを効率化する」といった打ち手には、どうしても限界があります。
特に課題になりやすいのがピークタイム以外のアイドルタイムです。席は空いているのに売上が立たない時間帯は、回転率を意識するほど機会損失として重くのしかかります。
そこで一つの選択肢になるのが、デリバリーを活用して店舗外で売上をつくるという考え方です。客席数や来店数に依存せず、仕込みや調理の余力がある時間を、そのまま売上に変えることができます。
WannaEatのフーシェアは、すでに実績のあるブランドを活用しながら、アイドルタイムをデリバリー売上に転換するためのフードシェアリングサービスです。出店店舗数19,000件(2025年12月時点)を突破しており、導入ブランドは110種類以上から入れ替えが可能です。
回転率をこれ以上どう上げればいいか分からない場合は、店内の回転だけでなく、アイドルタイムを売上に変える設計ができるかという観点で前提整理から確認してみてください。初期の手元資金実質0円で始められるプランもあり、既存スタッフで回せるオペレーション設計も相談可能です。